「あれはなんじゃ」
「わしはあれにのりたい」
そう家来に話しているのは、ちょんまげを結った愛嬌たっぷりのおとのさま。住んでいる場所はお城ですが、住んでいる時代は、なんと私たちと同じ現代。おとのさまにとっては見るもの見るものが新鮮で、町の人たちのことが気になって仕方がない様子。そんなおとのさまが今回気になったのは、「かごよりもはやく走れるのりもの」。早速、家来のさんだゆうを連れてそののりものを売っているお店で赤いピカピカのを1台購入し、公園で乗る練習をはじめます。さてさて、はじめて自分でこぐのりもの、うまく乗れるでしょうか?何度も転んだり、補助輪を使って乗ってみたり、家来に後ろを持ってもらったり…(もちろん途中でこっそり手を離されてしまうんですけどね)。こちらの練習風景は、もしかしたら読んでいる子ども達もどこか身覚えがあるのでは?
ちょっととぼけたおとのさまと、初老の落ち着いた家来とのやりとりがおかしくて、たびたび笑ってしまいます。好奇心旺盛で無邪気なおとのさまを見ていると、なんだか元気な子どもを見ているかのよう。ちょっと失敗をやらかしてしまってもなんだか許せてしまうから不思議です。
すべての漢字にルビがついていて、絵がたっぷり入ったこちらのお話は、絵本から読み物へ移行する時期の子ども達が無理なく読むのにぴったり。中川ひろたかさんのユーモアたっぷりのお話と、田中六大さんのおとのさまと家来の楽しい挿し絵に、読み始めたら最後まですいすい読めること間違いなしの1冊です。特におとのさまと家来の会話にはつっこみどころが満載!今にも読む子ども達のつっこみと笑い声が聞こえてきそうです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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