町はずれの古い郵便局と小さな公園のあいだにある、いまにもたおれそうなビル。それがモンスター・ホテル。どんなホテルなのかといえば…、その名のとおり、人間の町に遊びに来たモンスターたちが泊まるホテルなのです。
さっそくどんなモンスターがいるのかちょっとのぞいてみましょう。
ホテルに入って、まず最初に出会うのがカウンターにいる透明人間のトオルさんです。透明人間といっても、頭からペンキを浴びて以来、体がうっすらと見えてしまっているトオルさんですが、かえってべんりなのだそう。読者からも見えるので安心ですね。そしてホテルを案内したりお掃除したりしているのは、人間に化けようとして失敗し、キツネにも人間にもなれなくなってしまった女の子ツネミさん。トオルさんとツネミさんは、ここだけの話、恋人なんですって(かわいいですね)。そして今回、お客さんとしてホテルにやってくるのは、ドラキュラはくしゃく、デモンじいさんとこあくまたち、カッパの新婚さん、ゆうれいのキヨコさん、ドラキュラはくしゃくの奥さんのカーミラさんです。
さて、トオルさんとツネミさんは久しぶりに、あるモンスターを復活させようとしていました。そのモンスターの名は「いるぞうくん」。面白い名前ですね。なぜこんな名前なのかといえば、夜に一人でこわくて眠れない時に「だれかいないの?」とベッドの下に聞いてみると、「いるぞう」って答えてくれるからだとか。しかし、そんな子ども達の頼もしい味方「いるぞうくん」は、ほこりの固まりでできているので、ある時強い風に吹き飛ばされて消えてしまったのです。そこで、トオルさんとツネミさんはもう一度「いるぞうくん」に会いたくて何年もベッドの下をそうじせず、ほこりがたまるのを待っているのですが…。さらに、その部屋にドラキュラだんしゃくがどうしても泊まりたいと言い出します。みんなは、もう一度「いるぞうくん」に会うことができるのでしょうか?
人気児童文学作家、柏葉幸子さんが描く楽しくて心温まる「モンスター・ホテルシリーズ」。このシリーズの楽しさは、なんといっても登場人物(モンスター?)のキャラクターのユニークさ!絵本作家の高畠純さんが描くモンスターたちの姿はユーモラスで親しみ深くて、読んでいるとどんどん仲良くなれそうな気がしてきます。シリーズは今回で11作目となりますが、お話ごとにいろいろなモンスターが登場するので、ぜひシリーズで読んで自分のお気に入りモンスターを探して下さいね。文字はすべて平仮名で書かれていますが、読みごたえはたっぷり。小学1年生から3年生ぐらいまで楽しめるシリーズとしておすすめです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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