「しんでくれた」。このドキッとするタイトルの絵本は、谷川俊太郎さんの詩から生まれた作品です。
うし しんでくれた ぼくのために
そいではんばーぐになった
ありがとう うし
そう、これは死に対してただ悲しんだり切ない気持ちになったりする、という内容のものではありません。
生き物は生き物を食べてなければ生きてはいけない。人間は他の生き物のおかげで生きている。
「いただきます」という感謝の気持ちが生まれる詩なのです。
普段、食事の時間になるとテーブルに並ぶさまざまな料理。
食べればぼくたちは元気になり、成長し、生きる力がわいてきます。
牛だけでなく、豚や鳥、魚もぼくのためにしんでくれているのです。
だからといって、ぼくは彼らのためにしんでやることはできない。
だれもぼくを食べる必要がないから。
だからこそ・・・・。
力強く描かれた生き物たち、美味しそうに描かれたハンバーグ。そして幸せそうな表情のぼく。
知らなければ気がつかなかったかもしれない。でも、やっぱり大切な事実は伝えた方がいいし、子どもたちもこう思うはず。
「ぼくを輝かせてくれてありがとう。そしていただきます。」
シンプルでわかりやすい言葉の中につまった、生きることへのエネルギー。
ぜひ声に出して読んで、その力を感じてみてください。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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