ナナカラやまは海と空に囲まれた美しくて豊かな世界。
それは、数えきれないくらいの色々な生き物たちが暮らしているからなのです。
動物や花や木やさかな、虫や石やかぜ・・・彼らはみんなナナカラやまのナナカラたち。
この絵本では、ナナカラやまに語り伝わるナナカラたちの物語や歌を教えてくれます。
うれしいこと、悲しいこと、昔のこともつい昨日あった出来事も。
例えば忘れんぼうのカナヘビちゃんは、どこかで会ったことのあるようなチャーミングなうっかりさん。ちょっと嬉しい出会いがあった一日のことを教えてくれます。コジュケイの家のお話は、ナナカラらしいってどういうことかがよくわかる物語です。やっぱり小さい家がいちばんだね。
ナナカラに伝わる「はなひつじやま」と「カラカラにかわいたねこの砂」のお話は、切ないけれどナナカラの美しさの秘密が少しわかるようなエピソード。そして、最後はナナカラやまものがたりを上手に語ってくれるくまのおばあちゃんのお話。手作りジャムの美味しそうなことといったら・・・。
作者のどいかやさんが、このナナカラやまの世界をどれほど愛おしく感じ、丁寧に楽しみながら描いているのか。ため息が出るほど美しくて可愛らしいナナカラやまの風景とナナカラたちを見ていれば伝わってきます。いや、彼女もきっとナナカラの住人なのかもしれません!様々な緑色で表現された草花たち、豊かな表情や鮮やかに彩られた小物を身につけた生き物たち。どこまで細かく見ていっても飽きることのない、本当に豊かな絵の世界です。
いつでも取り出して、そっとナナカラやまの世界がのぞけるように、本棚の隅にしまっておいて欲しい1冊ですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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