「さあ、かあさん、ふたりで いこう。」
あるきながら サブロは、せなかの いすに こえを かけました。
サブロには、じぶんが せおっているのが、いすではなく、かあさんのように おもえるのでした。
「さあ、かあさん、ふたりで いこう。」
サブロは、せなかのいすに、こえをかけました。
いすに すわって いた かあさんは、もう いません。
でも、かあさんは、サブロの かえりを いつもこの いすに すわって、まっていて くれました。サブロが ちかづくと、りょううでを おおきく ひろげ、しっかり だきしめて くれました。
「おかえり、サブロ、おかえり」
サブロの せなかを なんども さすっていいました。
だいすきな かあさんでした。
やさしくて、生きるのが少し不器用な青年が、形見のいすとともに世の中を旅し、自分の居場所を見つけるお話。
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