「ぼくはピラミッドの下のあたりにいる人間なんだ。」
現役教師が描く、痛いほどリアルな教室内カーストと、その解決への確かな希望!
いい返したいことが山ほどあった。でもいえなかった。
心のなかで考えたことは、いざ口から出そうとすると、どこかに吸いこまれていくんだ。ビューンてね。
それに、八木沢くんが、ぼくの話を聞いてくれるはずがないってことはもうわかってた。だってさ……ぼくはピラミッドの下のあたりにいる人間なんだよね。
(中略)
ぼくの武器っていったいなんなんだろう?
そのときぼくは、まるでとりつかれたみたいになって考え始めてた。
自分の身を守ることができてさ、できるならこれ以上嫌な目にあわなくてすんでさ、いろんなことに立ち向かっていけてさ、まあ、そこまでぜいたくはいわないけど、とにかく今よりは過ごしやすくなるような武器。
――<ブルーの章より>
だって、クラスのなかでの峰岸さんの存在っていうか影響力はすごいもん。みんながみんな、いつも彼女の顔色をうかがってるんだからね。
こんなのって、以前はなかったと思うなあ。でも高学年になってみて、気がつけばそうなってたの。力関係が決まってしまったっていうか、そうなったらもうなかなか逆らえないっていうか……。
(中略)
「ねえ、お姉ちゃんさ。うちの武器ってなんだと思う?」
「あるよ、あんたの武器。すごいのが。知らないの?」
――<オレンジの章より>
小五の“ぼく”はクラス内の上下関係を敏感に感じ取りながら、何とか平穏にやり過ごすことのみを心がけて、嘲りのようないじめに日々耐えていた。そんなある日、クラスの男女で観戦していたサッカーの試合中に監督が言った、「自分の武器はなにか、考えろ」という言葉が頭に残る。そして、自分の武器を発見した“ぼく”は見事にカーストの下克上に成功するのだが……。
一方、同じクラスの“うち”は明るい世渡り上手な性格で、クラス内のちょっと嫌な雰囲気の力関係の中でも無難に毎日を過ごしていた。だが、ある女の子へのいじめをどうしても見過ごせず悩み、やはり同じサッカーの監督の言葉を聞いていた“うち”は自分にできることは何か、真剣に考える。
スクールカーストといじめにさらされている子どもたちの姿が痛いほどリアルに描かれている。人間の上下関係が生むどうしようもない理不尽さに立ち向かい、戦う勇気を与えてくれる衝撃作。
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