一年生になったやこちゃんは、となりの席のひめちゃんと友だちになりました。
ひめちゃんは、学校がはじまった日、教室のすみで泣いていた女の子です。
二人は仲良くなり、毎日手をつないで登下校するようになりました。
やこちゃんの左手はいつだってぽっかぽか。
なぜって、いつもひめちゃんとつなぐほうの手だから。
こわい犬の前の道も、左手がぼあーんとあつくなり勇気がわいて、ひめちゃんといっしょにとおることができます。
やこちゃんはそんな自分がうれしくてたまりません。
でも、教室で席替えがあって、二人は席が離れることになりました。
最初は泣きべそをかいていたひめちゃんですが、あたらしい席で、となりのたおくんと仲よくなったみたい。
やこちゃんは、遠くからそれを見ていて、心おだやかではありません。
いつのまにか、やこちゃんの左手は、すーすー寒くなって、だんだんかたーく、重たくなって……
体全体が冷たくなって、あたまにはつのが生えてきちゃった……!
やこちゃん、いったいどうしちゃったの!?
はじめての「友だち関係」に大きく揺れる子どもの心を、真正面から描いたお話。
友だちを他の子にとられてしまった!と感じたときの、もやもやした気持ちは、子どもを苦しめます。
とくに、女の子同士の場合「二人で友だち」の関係にこだわってしまう時期が多かれ少なかれあるようです。
もやもやした、嫉妬のような感情が、おさえきれないくらいにふくれあがったとき、どうしたらいいのか……?
それは大人でもむずかしいテーマです。
本書は、そんなむずかしいテーマを、大きめのひらがな文字だけで、一年生にも読みやすい幼年童話につくりあげました。
さみしい気持ちをわかってくれる友だちのあたたかい手が、魔法のような力をもっていること。
友だちが増えれば増えるほど、ぽかぽかの手がつながっていくことを、おしえてくれる作品です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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