大きな声で泣きながら学校から帰っていた清香に、竹の束を持ったおばあちゃんが話しかけてきました。
おばあちゃんは竹細工の名人でした。
魔法のような手さばきで、柔らかく形を変えられていく竹を見るうちに、清香の心は安らいでいきます。清香は学校であったことを語り出しました。
友だちの失敗を自分の身にかぶってあげたのです。
それを聞いたおばあちゃんは、「トガ負い比丘尼」の話を始めました。
繊細で優しい清香。おだやかだけれども芯の通ったおばあちゃん。世代も性質も違う2人に、竹細工のような温かくゆるぎない友情が生まれます。
<ここがポイント>
・異世代の友情を描きます
・美しい竹細工が登場します
・自己犠牲をする勇気が書かれています
<編集者コメント>
「聞き書き」の名手である、作家の塩野米松さん。この作品は、まさに塩野さんでなければ書けないという設定でした。
作品に登場するおばあちゃんは、竹細工職人です。篠竹は細く、ひと目ひと目、丁寧に力強く編んでいかなければなりません。どんなに手練の職人でも、作業の見通しがつくと、思わず安堵の溜息をつく。そんな繊細で根気のいる作業です。70年、不休で作業してきたというおばあちゃん。教室で、男の子たちの心ない言葉に傷ついた清香ですが、ふと、「このおばあちゃんなら大丈夫」と確信します。
清香の心が、だんだんとおばあちゃんへ寄り添っていく、その過程が、この作品の見どころです。
美しい竹細工などの挿し絵は、新鋭の画家・はまのゆかさんが担当しています。
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