表紙にはきつねいろのクリームパン。静かですが思わず触れたくなるような存在感があります。絵本を開くと、黒ごまののったあんぱんがひとつ。「あんぱん どうぞ」
ぱくっと食べると、中のあんこがのぞきます。表面の焼き色、齧ってほろっとほぐれた生地。絵の、あまりの「あんぱん」らしさに、見ているだけで、口の中に甘味が広がってくるような・・・。
ロールパン、ジャムパン、クリームパンにカレーパン、みんな知っているポピュラーなパンが「どうぞ」と順に出てきます。しっとりした表面の舌触りや、ひんやりしたクリーム、ザクザクッとした食感。ああ、あそこのパン屋さんのあの味・・!なんて、見た人の、パンの記憶をひきだしてしまう、この素晴らしいパンの絵は、なんと浮世絵の手法で摺られた木版画なんだそう!手がけているのは、彦坂木版工房の彦坂有紀さんと、もりといずみさん。
「木版画はその時の気温や湿度によって、色ののり方が変わります。パンもその日の気温や湿度によってふくらみが変わります。木版画特有の色ムラをおさえてなめらかに摺ると、しっとりとしたバターロールが現れ、木目を強調して摺ると、かりかりのフランスパンができあがります。」
木版画が、こんなにも完璧な「パン」になってしまうなんて。
目で見て味わうパン、どうぞ絵本を手に取って、めしあがれ!
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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