とっておきの金色の服をきて、きらきら光る髪飾りをつけた女の子が、走っていきます。
女の子の名はニーシェ。どうしておめかししているの?
じつはニーシェだけではなく、オランダのアムステルダムの町を守る、市民隊の人たち、誰もかれもがおめかしをして、そわそわしているのです。
なぜかっていうと、国いちばんのゆうめいな絵描き、レンブラントさんに、絵を描いてもらうから!
「こんなおおぜいのひとが、一枚の絵のなかにはいるかしら?」
ニーシェがたずねるとレンブラントさんは、描くのは大きな大きな絵であること、そして何人かは前に、何人かは後ろに立ってもらうと答えます。
さあ、前に描かれるのは、いちばんえらい隊長さん? それとも、ゆうかんな人? 頭がいい人……?
われこそはと名乗り出る人たちの話をきいたニーシェは、「わたしのはいるところなんてないわ」と帰ってしまいます。
しかし何週間か後、完成した絵のなかで、いちばん目立つところに描かれていたのは……。
「光の画家」として世界的に知られるオランダの画家、レンブラント。
レンブラントがアムステルダムの市民隊からたのまれて1642年に完成させたといわれる名画「夜警」は、暗い絵のなかに多くの人々が重なり合って立ち、そのなかにあかるく光り輝く少女がひとりまじって描かれているのが印象的な絵です。
いったいなぜ少女がこの場にいて、このように描かれたのかは諸説あり、本当のことはわかっていません。
本書は、オランダの作者ヤン・パウル・スクッテンが「夜警」をモチーフに創作した、フィクション。
「きっとアムステルダムの国立美術館に展示された『夜警』を見ているうちに、作者の耳には、ニーシェや登場人物の『声』が聞こえてきたのでしょう」と翻訳者はあとがきで書いています。
名画の自由な楽しみ方をおしえてくれると同時に、ストーリー絵本としてじゅうぶん楽しめる作品。
市民隊の人たちが、悪党どもをつかまえるためにふるった手腕を、それぞれ自慢してみせるくだりはおもしろいですよ。
いつか本物の『夜警』を見たくなる。そしてちょっぴり目からウロコの、名画から生まれた創作絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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17世紀にレンブラントが描いた名画「夜警」。
暗い色彩のなかで、ひとりの少女が、明るく輝くように描かれています。
この少女を主人公に、「夜警」が描かれた背景をイマジネーション豊かに描いた、楽しいフィクション絵本ができました。
金色の服をきておめかしをしたニーシェは、レンブラントさんが市民隊の絵をかくときいて、アトリエをたずねます。
こんなにたくさんの人をどうやって1枚の絵にかくのかしらと興味津々のニーシェ。
レンブラントさんは、何人かを前に、何人かは後ろにかくと言います。
市民隊の男たちはそれぞれ自分を前にすべきだと主張しますが……。
子どもたちにも、名画に興味と親しみを感じさせてくれる作品です。
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