「バネッサねえさん、だめ! がおーう!」
ある日、妹のバージニアは目が覚めると、ぐるるる、がるるる。
むしゃくしゃして、まるでおおかみみたいなことをする。
姉のバネッサのお気に入りの黄色いワンピースも、はみがきの音も、小鳥のさえずりだって気に入らない。
こうなってしまうと手がつけられない。
家が真っ暗になって、ひっくりかえって、心までかげる・・・。
こんな「おおかみきぶん」を引き上げてくれるものはなんだろう?
バネッサは、毛布の中のバージニアの隣にもぐりこんで聞いてみます。
「なにかきっと あるはずよ、あかるい きもちに なれること」
すると、バージニアは言います。
この空を飛んで完璧な場所に行きたい、ぜったいに悲しい気持ちにならないところ。
「それって、どこ?」
「ブルームズベリーにきまってる」
ブルームズベリーってどこ・・・?バネッサが悩み、考えついた答えはとっても素敵な方法!
おうちの中にいたってバージニアの好きなものに囲まれて、完璧!
心の庭は、だいぶいい感じ!!
作家ヴァージニア・ウルフとその姉である画家ヴァネッサ・ベルをモチーフにしたこの作品。どうしたって悲しい現実に向かい合わなければならない子にとって、周りはどうやって手をさしのべられるのでしょう。
ゆううつな妹と、ほがらかな姉は、その豊かな想像力を共有することで、心の中でしっかりとつながりあっています。妹を愛する気持ちと、自由で美しい絵の数々は、読者である私たちの心をも開放してくれるかのようです。
カナダ総督文学賞児童書部門受賞、第20回いたばし国際絵本翻訳大賞(英語部門)受賞と、国内でも世界でも話題となった作品です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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