「やぎのしずか」シリーズ。
今回しずかは、ナマズの作った「しんみりするうた」を聞いて、「しんみりってなんだろう?」と考えます。
「しんみり」について考えるしずかは、今まで気にとめなかったいろいろなことを、あらためて見つめなおしていきます。
急に静かになって、ぽとりと地面に落ちたセミ。
だれにも知られずに、きらきらときらめくクモの巣のうえの朝つゆ。
食べられてしまって、咲くことのできなかった花のつぼみ。
ありふれてあちこちにあるさまざまな「しんみり」に、しずかはさめざめと涙します。
前作「やぎのしずかのたいへんなたいへんないちにち」とうってかわって、全体を通して穏やかな、まさしく「しんみり」した1日の物語。
「しんみり」だったり、あるいは「せつない」だったり、ただ悲しいのとは少しちがう、そんな胸の痛みの不思議について考えるきっかけになる絵本。
しずかといっしょに、「しんみりってどういうことだろう?」そう考えながらあたりを見回してみると・・・
ふだん気づかないものを美しいと思えたり、小さなものにやさしくなれるかも。
それですこしかなしい気持ちになったなら、しずかとその友だちが物語の最後に歌うその歌を、想像しながらいっしょに歌ってみてください。
ほのかな希望と救いのある結末が、やさしい気持ちを育む一冊。
(堀井拓馬 小説家)
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