ゴリラといえば、両腕を振って胸を叩く勇猛な姿!
その動作を「ドラミング」と呼びます。
敵を脅し、戦いをはじめる合図として鳴らす恐ろしい音……
以前はそう考えられていました。
そう、ゴリラはただ敵を威嚇するために胸を叩ているわけではなかったのです。
そこには、ゴリラのおどろくべき高度な社会性や、平和を愛する穏やかな性格に関係する、実にさまざまな意味が隠されていました。
観察レポートという形をとっている本作、小学校中学年以上を対象としていますが、大人でも楽しめるとても充実した内容です。
なぜドラミングをするのかという表題のテーマ以外にも―
子どもはドラミングをするときに胸を叩かない!?
ドラミングは大人のオスにしかできない理由がある!?
胸を叩く時の手の形はグーじゃない!?
大人にとっても興味深い、ゴリラに関する新鮮な知見がふんだんに盛り込まれています。
一方で、「ゴリラになんてぜんぜん興味ないや」という人にもぜひ読んでもらいたい作品でもあります。
というのも、この作品はゴリラの生態を通して、人間である私たち自身に他人との接し方を振り返らせ、多くを反省させてくれる本でもあるからです。
「仲裁してくれる仲間がいるからこそ、ゴリラたちは自己主張しあい、対等な関係を保っていられるのです」
作中で描かれる、自己主張しつつも互いを認め合い譲り合うゴリラの精神からは、大人も学ばされることがたくさんあります。
ゴリラに興味がないからと知らないでいるにはもったいない一冊!
(堀井拓馬 小説家)
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