宮沢賢治の世界観をあますところなく描いた「銀河鉄道の夜」の傑作絵本。
「銀河鉄道の夜」と聞くと、どんな光景が浮かびますか?
どんなイラストの本で読んだのかによっても、印象ががらりと変わるこの作品。本作は、色合いも表現もアート感たっぷり。重厚な雰囲気の、おしゃれで大人っぽい一冊です。
主人公ジョバンニは、貧しく病気のお母さんを助けるために、
学校以外の時間は印刷所で働いている少年です。
時はちょうど銀河のお祭り、ケンタウルス祭の日。
学校では星座の図を前に、先生から「銀河は何でできているか」と
質問されますが、星でできていると知っていながら、
なぜか答えられないジョバンニ。
ザネリという少年にいじめられ、友人カンパネルラまでが
自分に距離を置きはじめ、学校で伸びやかに過ごせない毎日なのです。
その夜、暗い草原でジョバンニは、星々を親しみをこめて見上げていました。
すると、「銀河ステーション」という声がして、目の前がぱっと
明るくなり、気づくと電車に乗っていたのです。
ふと前を見ると、そこには大好きなカンパネルラが…。
美しくも哀しい星空の旅が始まります。
小林敏也さんは、画本宮沢賢治シリーズにより、第13回宮沢賢治賞を受賞されたイラストレーター。黒や濃紺の画面に、ストイックな白い線で、光が対象を浮かびあがらせるような独特な表現によって、賢治の繊細かつ幻想的な世界観をあますところなく表します。ページをめくる度に、天体、暗い森など、はっとするような新鮮な心象風景が待っています。100ページに及ぶボリュームで、全見開きにイラストがあるので、細かい場面が丁寧に絵にされているのも魅力。賢治の美しい言葉のイメージが、いっそう胸に迫ってきますね。
はじめて読む方にも、宮沢賢治ファンにもオススメしたい傑作!
星が輝きを増す冬の夜に、じっくりひたって読みたい一冊です。
(長安さほ 編集者・ライター)
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