家のなかは、しずかでした。
火曜日のあとには、水曜日がきて、毎日がきちんとすぎていました。
「ちっちゃいさん」が、やってくるまでは―
長い旅のすえ、ママとパパのいるこの星へやってきた「ちっちゃいさん」。
ちっちゃいさんには、すごい機能がいっぱい!
すごい音を出す強力なサイレンのおかげで、どこに置いたかいつでもわかります。
また、顔にある吸引器を作動させて、ンクンクとミルクを飲みます。
顔の横についているかたつむりのような突起は、なんと高性能の音声レーダー!
未知の機能でいっぱいのちっちゃいさんも、この取り扱い説明書があれば大丈夫。
赤ちゃんを別の星からきた未知の生物「ちっちゃいさん」にたとえて、その体の仕組みと気持ちとをユーモアたっぷりに解説する絵本です。
ちっちゃいさんは、大人とはちがう生き物。
彼らが泣くのには、大人がそうするのとは、ぜんぜんちがった意味があるのです。
たとえばそれは、ちっちゃいさんに必要なものは何かを当てるゲームの始まりの合図であり、はたまた、世界から色を盗んでいく“夜“というどろぼうを追い払うためのアラームであり―
ものごとのとらえ方に少し遊び心を取り入れることで、赤ちゃんのお世話をもっと愛おしく、ポジティブに考えられるようにしてくれる作品。
世界と命に対する愛にあふれた詩でありながら、赤ちゃんの気持ちを理解するのに役立つ、実用性の高い一冊でもあります。
さてさて、やってきたばかりのちっちゃいさん、泣いて暴れて、もしかしてこの星があんまり好きじゃないのかも?
でも大丈夫!
この星に隠されたとある大きな秘密に気づくとき、ちっちゃいさんは心から安心して、ここで生きていくことができるのです―
(堀井拓馬 小説家)
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