「あるところに、むちゃくちゃ わるい さい がいた。
なまえは イッサイ。」
こんなふうにはじまる佐々木マキさんの絵本。
凶暴そうな顔をした、体が小山ほどもある、サイのイッサイがどーんと描かれます。
このイッサイ、とにかく悪いことばかりするんです。
うさぎとこぶたのお弁当を奪い、ワニのしっぽをふんづけ、さるが遊ぶ木に体当たり。
みんなは走っていくイッサイを見送るしかありません。
おまけに、きのこちゃんが大事にしていた花壇をふみあらして、頭からかべに突っ込んだから、きのこちゃんはびっくり……!
イッサイったら、どこにでも頭から猛突進していっちゃう。
もう、みんな大迷惑なのです。
きのこちゃんは一計を案じ、崖の上に、ダンボールと古いカーテンで岩のようなものをこしらえます。
さあ、イッサイはここにも突っ込んでいく? どうなる!?
子どもに読んでみると、ほぼ間違いなく「もう一回読んで」と言われます。
『ぶたのたね』『やっぱりおおかみ』など、数々の絵本で子どもたちの心をつかむ佐々木マキさん。
絵をめくっていく楽しみや、「いったいどうなっちゃうんだろう?」と半信半疑でお話を想像する楽しみが、子どもの心にどしーんと根を下ろすみたいです。
予想どおりの“めでたしめでたし”にはならない、どこかで物語がつづいているような佐々木マキワールド。
頼りになる女の子、きのこちゃんの存在感も素敵です。
サイのイッサイ、いまはどこで何をしているのかしら?
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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