『あそこへ』などでビスト最優秀児童図書賞(現CBI最優秀児童図書賞。アイルランドを代表する児童書に贈られる)を何度も受賞している、マリー=ルイーズ・フィッツパトリックの作品。
ユーモラスな展開がほほえましい文字のない絵本です。
枝にとまってふくろう親子がすやすや、おやすみ中。
そこへ……こうもり親子がやってきて、同じ枝にとまります。
枝の上にふくろう親子。
枝の下にこうもり親子。
互いにちょっと気をつかって左右にずれてはみたものの……
末っ子同士がちょっかいを出し合い、親に怒られます。
ようやく、枝の上でも下でもすやすや……。
と思ったら大風が吹いてきて!?
丸い目を見開いてびっくりするふくろう母さんや、目を吊り上げて「めっ」という顔をするこうもり母さん。
二つの家族の対比が面白いのです。
親がいっしょうけんめい寝かせようとしても、互いに興味津々のちびっこたちがかわいい!
つい口元が緩んでしまいます。
大風の中、吹き飛ばされてしまった子どもたちを拾い集めに、ふくろう母さんとこうもり母さんが空中を飛び回るのですが、それがまた心あたたまる展開。
文字が読めない幼い子から大人まで、絵本の中に没入して楽しめます。
中表紙には「こちらをうえによんでみて」と逆さに読めることを示唆した記述が、上下二か所あります。
ふくろうを上にしたり、こうもりを上にしたりして読んでみてくださいね。
紫がかった紺色の夜空を背景に、枝の向こうには大きな月がのぼり……。
カラフルではないのに、ながめているうちに夜の色彩の豊かさを感じます。
ふしぎなあたたかい魅力をもつ絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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