クマのプーさんが住む、百町森を流れる小川がこのおはなしの舞台です。
森の入り口に、川に木の橋がかかっているところがありました。
この橋の上からプーやコブタが川を見ようとすれば、橋の上へじかに寝転んで、あたまをてすりの段のいちばん下へつっこみ、ゆっくり下の川をながめるのがいちばんおもしろかったのです。
これは、プーがそんなふうにして寝転んで川をながめていたときに、はつめいしたあそびのはなしです。
いいマツボックリを見つけたのに、川におっことしてしまったプー。
「いやアんなる!」と思ったプーでしたが、川をながめているうちにおかしなことに気づきます。
「ぼくは、あれをあっちがわにおとしたのに、こっちがわにやってきたぞ! また、やったら、また、でてくるかな?」
こういうわけで、プーはマツボックリをたくさんひろいにいき落としてみることにしました。
これがプーやその友だちがいつも森のはずれでしてあそんだという「プー棒投げ」のはじまりだったのです。
ところがある日のこと、棒ではなく、イーヨ―が流れてきて……!?
イーヨ―が「四本の足を空中に突きたて、おちつきはらい、威厳あるようすで」橋の下からあらわれ、
「まわっちゃ、わるいかね?」と言いながら、流れの中でぐるぐる回転するようすには、おかしくて笑いたくなっちゃいます。
プーなりにいっしょうけんめい考えて、イーヨーを助けようとする場面も、なんとものんびりしています。
いったいイーヨ―はなぜ川を流れるはめになったのかしら?
イーヨ―も助け出され、あたたかい夏の午後、しばらく「棒投げ」であそんだあと、クリストファー・ロビンとプーとコブタは、だまって、ながいあいだ、下を流れてゆく川をながめます。
そんなとき、ぽろっと思っていることを口にしたり、「まちがってないさ」と言ってくれる友だちがすぐ横にいて……
川のゆったりしたせせらぎみたいに、とってもいい時間が流れます。
石井桃子さんの名訳でおくる、「はじめてのプーさん」シリーズ。
E.H.シェパードの挿絵がふんだん入り、絵童話のように1話読み切りを楽しめるシリーズです。
のんびりしたおはなしのリズムのなかに、子ども時代のきらめきが重なる、すてきな夏のおはなしです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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