アンデルセン原作の「雪の女王」を、ロシアのモスクワ出身のヤナ・セドワが、幻想的な絵で描いた大判絵本。
ある日、邪悪な悪魔が鏡を作ったことから物語ははじまります。
この鏡には、良いものや美しいものは小さく縮んでほとんどうつらず、悪いものや醜いものは実際よりはるかに大きくうつるのです。(想像してみるとおそろしい鏡です!)
ものをゆがめてうつす鏡は、地面に落ちて粉々になり、破片となって人々に刺さります。
心臓に刺さると心臓を氷のように冷たくかたくしてしまい、目に入るとその人が見るすべてのものの本当の姿をゆがめてしまうのです。
少年カイと少女ゲルダはいつも仲よく、植木箱のバラのそばで絵本を読んだり歌を歌ったりしていました。
しかしあるときカイの目と心臓に、悪魔の鏡の破片が入り込んでしまいました。
やさしさを失ったカイは、植木箱を蹴飛ばしゲルダをからかい、雪の女王に連れ去られてしまいます。
ゲルダは、どこへいってしまったかわからないカイを探し求めます……。
絵を描いたヤナ・セドワは本作がデビュー作。
細かい筆致で描かれた青色が美しい絵には、人間の存在がずっと小さく、とりまく生き物たちが大きく描かれます。
ゲルダはカイを探し求め、花園の魔女やカラス、盗賊の娘、ラップ人や賢いフィン人に出会います。
花園でオニユリやマツユキソウ、ヒヤシンスにキンポウゲ、スイセンの花々がくちぐちに話す場面は、イマジネーションがかきたてられ、アンデルセンの魔法の中にとじこめられたような気持ちになります。
「最初のお話」から「六番目のお話」まで、6つの小さな章で成り立つ大判絵本。
北国の美しさ厳しさ、純粋無垢な心が悪魔にうちかつ強さ。
少女の一途な思いが辿り着く結末に、大人もきっと心を奪われることでしょう。
子どもにはぜひお話を一つずつ、読み聞かせで読んであげてください。
心に深く余韻を残す、美しいアンデルセンの絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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