「イソップ物語」はイソップによって書かれた本ではありません。そうではなく、イソップによって「語られたもの」と言われています。どういうことかというと、イソップが自分で作った『イソップ物語』を、街の辻つじで行き交う人に向かって語っていたというわけです。イソップの語りはたいへんじょうずで、そして、人気があったのでしょう。当時もきっと忙しく行き来していたであろう、道行く人々の足を止めていたのですから。イソップの教訓や風刺をふくんだ語りの魅力は、時代が進んでも色あせることはありませんでした。ついに、後の時代の人が文字にして残すまでになったのです。それが、いまに残る『イソップ物語』です。さてこの、内田麟太郎が描く『イソップ物語』です。このイソップは、これまでのイソップ物語とはひと味もふた味もちがいます。以下は、内田麟太郎さんの言葉です。「私はもっと語りの魅力をとりもどした、イソップ物語を書きたくなりました。さいわいなことに、私たちの国には落語といううれしい話芸があります。そこから「マクラ」と「オチ」をいただきました。読んで笑える『イソップ物語』です。元祖笑々亭麟之助『イソップ物語』でございます。本邦初演。いいえ、もしかしたら世界でも初めての。」世界初の「イソップ語り」の『イソップ物語』どうぞお楽しみください。お後がよろしいようで……。
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