「Trick or treat!(トリック・オア・トリート!)」
「お菓子をくれないと、いたずらするぞ!」
日本でも仮装イベントが行われたり、仮装で歩く子どもたちを通りで見かけたりと、年々賑やかになるハロウィーンの行事。本書は、ハロウィーンと家族がテーマの絵童話でありながら、ハロウィーン文化の本場であるアメリカでのハロウィーンの楽しまれ方が描かれており、その由来やきまりごと、衣装の作り方まで、ハロウィーンという行事について深く知ることができます。
どうしてハロウィーンでは、子どもたちが「お菓子をくれないといたずらするぞ!」と言ってお菓子をもらうことになったのか。
ハロウィーンの日、仮装を当てるのはあいさつのようなもので、当てるのが礼儀だというはなし。
仮装の衣装は、家にある材料で作る手作りの衣装が一番おすすめだということ。
衣装の材料の中でも、最高に便利なのは針金ハンガー!などなど。
さらに、ハロウィーンが家族にとっていかに大事なイベントであるかが語られていきます。
「衣装ができたら、お菓子もらいに出かける前に、写真をカシャリ。
毎年、写真がたまっていく。
毎年、写真を見ながら、みんなで笑う。
「あの時はおかしかったね。朝起きて台所に行ったら、コーヒーで眠れなくなったパパが、ロボットのカッコして、ガタガタ引き出し直してたよね」とか。
ハロウィーンって、そういうお祭りだ。」
「お菓子をもらえるのは、子どもの時だけ。子どもたちは中学生ぐらいになると、もうすぐお菓子もらいが終わりになってしまうことに、気がつきはじめる。当たり前と思っていたお菓子もらいがなくなってしまう。アイスクリームが、溶けてしまうように。」
「お菓子をもらっていた頃の仮装の写真は、みんなの宝物。大人になった子どもたちは、考える。針金ハンガーをママやパパと曲げながら作っていたのは、なんだったのだろう?
思い出とか、愛という気持ち。一緒にいる時間。一緒に歩く時間。それとも?」
本書を書いたのは、小沢健二さんと日米恐怖学会。小沢健二さんといえば、1990年代に爆発的な人気を博し、通称オザケンと呼ばれているアーティスト。読む前は、なぜオザケンが童話を? と不思議に思ったのですが、読み終えて深く納得しました。人生のきらきらした宝物のような瞬間を切り取る楽曲が魅力のオザケンらしいメッセージがぎゅーっと詰まっているからです。
まだ幼い子を抱えた育児真っ只中の方も、ちょうどハロウィーンを楽しむ年齢の子と過ごしている方も、もう子どもが大きくなってしまった方も、あるいは自分自身の子ども時代に思いを馳せて‥‥‥。
アイスクリームのような時間の貴重さに気づき、家族の大切な時間に笑って涙してしまうような温かな絵童話。ハロウィーンを迎える前の準備として、家族でゆっくり読んでみませんか? この本を読んだら、ハロウィーンという行事が一層豊かなものに感じられるに違いありません。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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