まるで神話のようだ。新しい時代の母娘の。
──梨木香歩氏
「読者をどんどん惹きつけていく、さすがのストーリーテリングで、この子どもたち三人の冒険と友情に引き込まれ、彼女らが愛おしくて愛さずにはいられなくなります。
母という存在の呪いと祝福、慈しみと憎悪──母と娘は永遠に誰よりも生々しく近く、そして誰よりも遠い存在なのでしょう。」
足りないってことばをママはあたしによく使う。
あんたは言葉が足りない、とか素直さが足りない、あとは血が足りないってのもある。
ママの中ではあたしは足りないものだらけらしい。
とにかく、あたしの歯が足りないせいですきまがあいてしまい、矯正が必要になるかもしれないということだ。
そうしないと十年後にはかみあわせの不具合で色々とよくないことがおこるかもしれず、それをママはとても気にしていたから、今日歯医者さんに行かなかったことにも腹をたてているらしい。
でもあたしにとってはたいした問題じゃない。
歯が何本か足りないまま成長したってそれがどうだっていうのだろう。それはあたしの未来でママの未来じゃない。
─本文より。
どこにでもいる標準的見た目の中学生の私と、オカルトマニアで女子力の高い美月ちゃんは保育園からの幼なじみでママ同士も友だちだ。
ある日、美月ちゃんの頼みでクラスで人気の男子、日比野を誘い、3人で近所の幽霊屋敷へ肝だめしに行ったのだが……。
幽霊屋敷探検を発端におこる様々な出来事を通じ母と娘たちの葛藤と成長とがリアルに描かれる。話題の母娘問題を独特の観察眼でとらえた感動作。
椋鳩十賞、小さな童話賞大賞受賞作家、「頭のうちどころが悪かった熊の話」の安東みきえ氏、初の長編小説。
(中学生漢字以上にルビ)
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