小さな生き物 ミジンコが主人公です。
最初のページでは小さすぎて主人公が見えません!
2ページ目でようやく小さくぽっと現れますが、話し方も奥ゆかしく上品で恥ずかしがりや。
透明だから食べたものが丸見えなところも、「きゃ、はずかしい!」なんて言ったりしていて可愛らしい。
でも、途中ミジンコの真っ正面の顔が登場して、それはそれはインパクトがあります!(最後の見返しに写真があります。小さいですけど。)
いつも見ていたのは横顔だったのか! と、子供と読んで知る大人も多いのではないでしょうか。
そういえばミジンコって、あらためて聞かれるとどんな生き物だったっけ?
小学校の顕微鏡で初めて見た動く生き物って確かミジンコだったような。
小さくて、透明で、目があって手足らしきものがあって、時々ピクって動く。
小さいのに生きてるんだってちょっと感動したのを覚えています。
この絵本は、科学絵本ほどガチガチにミジンコの生態について語るのではなく、
小ちゃいミジンコも頭をとんがらせたり、死んだふりしたり、たくさんの子どもを産んで、ほとんどが魚に食べられて死んでいく……
その魚を私たち人間が食べて、命はぐるっと回って繋がっているんだね、ということをさりげなく教えてくれます。
絵は、短編アニメーションや絵本を多数手がける山村浩二さん。
私も、赤ちゃんが先頭に立って小さなおもちゃや小さな魑魅魍魎がついていく絵本『パレード』(講談社)が好きで低学年によく読みます。
小ちゃくてはかなげなミジンコは、山村さんの絵とぴったりあって妙な愛着が湧いてしまいます。
柔らかくて綺麗な色彩の中にメッセージを感じる絵がとても魅力的です。
公立の小学校では5年生の理科で顕微鏡を学習します。その時初めてミジンコと出会う子も多いことでしょう。
この本と一緒に、ミジンコの写真が載っている図鑑や水中昆虫の生態の本を紹介すると興味の幅が広がりそうですね。
(山田裕子 小学校司書)
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