眠る時間になり、女の子のルビーは、暗い階段をあがって寝室へ向かいます。
そのとき頭の中でぐるぐる回り出した、きみわるい歌……。
「きっと こんや くる くる
キミワリーナが やってくる
きみの いえに くる くる……」
街角で手回しオルガンのおじさんが歌っていた歌です。
ベッドに入ったあともルビーはなかなか眠れません。
ふいにまっくろい影が部屋をとおりぬけていったり、何かがすすけたえんとつをすーっとのぼっていったり……。
あるときは屋根の上でサムの耳元をかすめ、またあるときは図書室の本棚の向こうを走り抜ける。
公園の暗がりや、真夜中のベッドの上。町のあちこちでキミワリーナの目撃情報が上がり、人々はあやしい空気に眉をひそめます。
しかし、どうやら盗まれたものといえば、チーズ、本、ビスケットの缶詰、ハンカチ、ロープ、工具箱……!?
いったいこれらが何の役に立つのでしょう?
ちょっと怖くてミステリアスな空気が、途中からキミワリーナの正体とともに、ガラッと変わっていく絵本。
薄暗い絵と、林木林さんの訳にすっかりだまされてしまいます!
なんともかわいいキミワリーナの正体、そして不機嫌そうな手回しオルガンのおじさん、警察官ビッカーズの間抜けな下着姿(でも帽子はちゃんとかぶっているんですよ!)にクスッと笑いたくなりますよ。
「こわがらないで。このよには わたしたちの めに みえないものがある、それだけのことですから」
見えないものを想像するドキドキでいっぱいの、夜の絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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