窓から吹き込む夜の風に、ひやりと目が覚めた。
明かりをつけて見たら、なんと、ぼくの影がこっそり、窓から出ていくところだった!
びっくりしてどこに行くかたずねたぼくに、影は答えた。
「かげパに行くんだよ。だって今日は青い月の夜だからね」と。
世界じゅうの影が、影の国に集まってパーティーをするんだって。
ぼくも一緒に連れて行ってもらうことにした。
手をつなぐと、ふわりと夜空に浮き上がる。空にはサファイアみたいに青く輝くまんまるな月。月を通り抜けると、影の国に到着! そこには見たこともない、不思議な光景が広がっていた。
広場では、いろんな人間や動物の影たちが、のびたりちぢんだり、飛んだりはねたり、そりゃもう愉快そうにダンスを踊ってる。
おなかがすいたら、影アイスクリームを食べよう。
いっぱい踊って、遊んで、食べて、やがてうちへ帰る時間がやってくる――。
さまざまな形の影が大集合する楽しさ、胸おどるパーティと楽しい音楽、そしてヒヤリと冷たくておいしそうな食べ物たち。絵本の中に描かれる影のパーティは、ちょっと不思議で怖くもあるんです。
帰り道に聞いた、影のちょっぴりせつない告白も、「ぼくは君で、君はぼくなんだもん」という言葉を思い出し、ほっとします。そして、ぼくと影とのやりとりに、今自分が見ている世界だけが、すべてではないのかもしれない、見えていない世界もあるのかもしれないと……とふと思います。
著者の富安陽子さんは、妖怪や異形のもの、そして土地の不思議を、温かいまなざしでユーモアたっぷりに描き、「妖怪一家九十九さん」「やまんばあさん」「スギナ屋敷のオバケさん」「まゆとおに」「オニのサラリーマン」シリーズなど、絵本と読み物で、数々の人気シリーズを生み出しています。
影や暗闇は、ちょっと怖そうで不思議、でものぞいてみたい。
そんな好奇心を抱く子どもにぴったりの一冊です。
(絵本ナビ編集部)
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