ちょっぴり奇妙で、愛情に満ちたおはなしです。
夜、ひかりが、ある星からおりてくるところから絵本ははじまります。
月があかるい夜ですから、ひかりも少し控えめなのか、ゆっくりおりてきて、森の木の枝々の間をゆらーりゆらり飛び跳ねて……。
そっと地面に何かを置いてすーっと消えていきます。
森のこみち29番地で待ち構えていた、お父さんとお母さんは喜びます。
「やっと、きたか!」
「あかちゃんがまちがえることはないわ」
「ぼくたちのあかちゃんだ。かいでごらん? ほしのかおりがするよ!」
そのあかちゃんは……水槽の中の小さな魚。
次へ頁をめくると、語り合っているのはクマの夫婦なのです。
まさか、クマが魚を子どもにするなんて!
おめでとうを言いにきた動物たちは驚きます。
「予想していたのとちがうな」とか、「いったいいつから、クマが魚を子どもに迎えるようになったのかね?」とか言って……。
でもクマ夫婦は、魚のあかちゃんから選ばれたことを疑わず、水槽を大事に抱いています。
そして夜明けにうちを出て、森の小径を歩いていくのです。
いったい、クマ夫婦と水槽のあかちゃんはどこに向かっているのでしょう……?
続きはぜひ絵本をご覧ください。
目の前にいるあかちゃんのために、クマ夫婦がとった行動に心を動かされます。
本書は、AHDS(アラン・ハーンドン・ダドリー症候群)という先天性の難病を抱えた子どもと、その両親がモデルになった絵本。
誰も彼ものいのちが、おのおの、かけがえのないもので、特別であることへの思いが込められています。
不機嫌にぶつぶつ言うふくろうをはじめ、優しげに感想を言ったり、ひそひそと噂をする森の動物たちは、いかにも真っ当で、なぜだかちょっと滑稽に感じられます。
でも、あかちゃんをあたりまえに受け止めるクマ夫婦の喜びと、どこかユーモラスな雰囲気が漂う中、森の動物たちもあたらしい家族に寄り添っていきます。
優しいいのちの絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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お月さまが明るい夜。森にすむクマ夫婦のところに、
まちのぞんでいたあかちゃんがやってきました。
そのあかちゃんは……なんと、さかな!
クマがさかなをこどもにするなんて! と、森の動物たちはとまどいます。
こどもは星からのおくりもの。クマ夫婦は、あかちゃんにとって
一番ふさわしい場所で暮らすことにしました。それは……
淡々とした語り口と、美しい色彩のイラストで、
わが子を自然のままに受けとめ、寄り添う姿をえがきます。
まわりの動物たちも、驚き、とまどいながらも
新しい仲間に寄り添っていきます。
AHDS(アラン・ハーンドン・ダドリー症候群)という
先天性の脳の難病をかかえたこどもと、その両親がモデルになった絵本。
だれもが大切にされ、ともに生きることへの願いがこめられています。
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