新しい家、新しい街、新しい学校。
でもここには、新しい友だちだけが、いない。
引っ越してきたばかりの小学4年生、サトシ。
彼は新しい学校で、友だちをつくるタイミングを逃してしまいます。
「ひとりでいるのが好きなおとなしい転校生」というイメージをもたれてしまったサトシに、だれも声をかけてくれません。
「こんなのぼくじゃない。どうにかしたい。でも、どうしたらいいんだろう?」
そんなサトシの元にあらわれた、全身ブルーの変なやつ!
「よおっ!」
「なに、なに、なに?」
「おれさまか? なにに見える?」
頭に皿がのっていて、甲羅を背負って、平たいクチバシ。
これって、どっからどうみても――
「カッパ?」
「やっぱり? じゃ、そういうことで」
そのおかしな青いカッパは、今日一日をサトシといっしょに過ごすためにあらわれたのだといいます。
サトシはなんとか帰ってもらおうとするのですが、カッパはそばを離れません。
おとなしく一日一緒にいるか、あるいは、カッパが住んでいる場所まで送りとどけることができれば、帰ってくれるらしいのですが……
どこかの川に住んでいるというヒントを元に、サトシはカッパの住処を探し当てるため、まだ見慣れない街に飛びだします。
第66回青少年読書感想文全国コンクール、小学校中学年の部課題図書に選出された一冊。
人間ではもちろんないし、カッパにしたって、全身が青だなんて!
なにもかもがヘンテコな、「青いあいつ」。
人間とは少し常識のズレているところに、かわいげもあるのですが……
常にふざけた口調でサトシをおちょくってくるし、彼がやることなすことに、いちいち口をはさんできます。
「つまんねー!」
「ちょうせん、ちょうせんー!」
そんな陽気で少し強引な「青いあいつ」とは対照的に、サトシは新しい環境になじめず、ふさぎがち。「つまんないやつ」になるのが怖くて、教室でもちぢこまってしまいます。
「うまく話さなきゃ、おもしろいことを言わなくちゃと思えば思うほど、ことばが出てこない」「無視されたら、うまく話せなかったら、と思うとこわくて、自分からは声をかけられない」
そんなサトシにむけて「青いあいつ」は語ります。
「おまえはごちゃごちゃ考えずに、なんでもまずやってみりゃあいいだけだ」
不安におびえるサトシを見ていて、新しい環境に足をふみいれるときの、幼い日の不安を強烈に思い出しました。
勇気をふりしぼってやってみれば、なにを怖がっていたのかすぐに忘れてしまうくらい、あっけなくうまくいったりするものですが……
わかっていても、勇気を出すのは難しいものです。
「まずやってみりゃあいい!」
そう言って背中を押してくれる、自分だけの友だちがそばにいたら、どんなに心強いでしょう。
とても大きな意味のある、ほんの小さな最初の一歩。
そのための勇気をわけてくれる物語です!
青いあいつって、けっきょくなんなの?
なんでぼくのところにきたの?
ていうか、あいつの住処ってもしかして!?
読めばなるほど? やっぱりヘンテコ? 青いあいつの意外な正体とは!?
(堀井拓馬 小説家)
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