とうさんは、魔法使い。かあさんは、魔女。
森の中の家でうまれた女の子、ワンナ・ビーのおはなしです。
一見ふつうの女の子ですが、ゆりかごがある場所は高い木の上。
とうさんはそよ風でゆりかごを揺らし、かあさんは小鳥を呼び集めてきれいな歌をきかせてくれるんです。
歩くようになると灰色のハトがどんなときもついてきて、安心してワンナ・ビーが遊べるように見守ってくれます。
そして、かあさんはときどき、背中におんぶするように、ワンナ・ビーを一緒にほうきにのせて、宙がえりをしたりコウモリと競争したり。
いろんな飛び方をして遊んでくれました。
こんな魔女のむすめ、うらやましい!
あなたもワンナ・ビーみたいになりたくなるでしょう?
とうさんからも、かあさんからも、特別なことを教えてもらえる。
そして6歳になると、学校に入ります。
あらら、それは人間と同じですね。
といってももちろん魔女の学校! 楽しそうですがひとつ問題がありました。
それはワンナ・ビーが、魔法の勉強がなぜか苦手っていうことなんです。
……いったいどうしてなんでしょう?
種村有希子さんが描くかわいらしさいっぱいの魔女のむすめ、ワンナ・ビー。
前半はかわいくてうらやましくて……。
それなのに、途中から、うまくいかない困った顔をしたワンナ・ビーに読者の心も揺れます。
どうしてうまくいかないの?
とうさんとかあさんのむすめなのに……。
でもワンナ・ビーは実はそんなに気にしてなかったのです。
ワンナ・ビーが見て感じて、楽しんでいる世界では、そのとき「魔法」はそこまで必要なかったのかもしれません。
様々に揺れる心の動きの中で、だんだん子どもは大きくなっていきます。
大人は、ワンナ・ビーを見守るとうさんとかあさんにもつい感情移入してしまうかも。
最後は、ほんのり意志のともった、やわらかい、ワンナ・ビーの表情に思わずにっこり。
おはなしの名手、竹下文子さんが書くストーリーには、「いそがなくてもいいよ」という子どもたちへのエールが込められているような気がするのです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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