これは、あなたのひいおばあさんのお姉さんが、若かったときの話です。
家族でミサに行く日、お姉さんは頭が痛かったので、ひとりで家に残りベッドに横になっていました。枕元で音がしたので目を開けて見てみると、なんと、そこには小さな小さな人がいました。
その人は目が覚めるような美男で、女王様にするような丁寧なおじぎをしてから、こう言ったのです。
「この部屋を、私の妹が馬車で通るのを、お許しいただけないでしょうか?」と。
どうやら、今日は庭で結婚式があり、そこに向かう床下の道が雨でぬかるんでいるので、部屋の中を通してほしいということのようです。
「どうぞ、おとおり!」
お姉さんがそう答えると、もうそこには小さい人はいませんでした。
しばらくすると、馬車に乗った銀色のドレスのかわいい花嫁や、たくさんの小さい人たちが部屋を通っていきましたが、お姉さんは驚くことはなく、うっとり見とれていました。
昔の人たちは、小さい人たちが床下に住み着くと、運が開けることを知っていたのです。
この童話の作者は、ポーランドにおけるフェミニズム運動の先覚者となった作家、ナルツィザ・ジミホフスカ。1876年に発表された作品集に収められた一篇で、今のポーランド人にも読めないような古いポーランド語で書かれていました。このおはなしを発見し、あまりのかわいさに、難解なポーランド語を訳して日本に紹介してくれたのが、翻訳家の足立和子さんです。『はるのワンピースをつくりに』(ブロンズ新社)などでも人気の布川愛子さんの絵によって、さらに美しく、品のある世界へと生まれ変わった140年前の物語。ぜひ味わってみてください。
(絵本ナビ編集部)
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むかしむかしのお話です。あるとき、お姉さんが頭が痛くて寝ていると、枕もとでゴソゴソ音がしました。目をあけると、小さな小さな貴公子が立っていて、こういいました。「この部屋を馬車がとおるのを、お許しいただけないでしょうか? 妹がきょう結婚式をあげるのですが、雨で道がぬかるんでしまったのです。」しばらくすると暖炉から、白ネズミにひかれた小さな馬車がやってきました。乗っているのは、銀色のドレスを着た美しい花嫁です??。19世紀を生きたポーランドの女性社会運動家が書き残したおとぎ話を、日本オリジナルで絵本化しました。優美で繊細なお話にぴったりの絵で、贈り物にも最適です。
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