「今日はきっとなにかある。
とくべつなこと!」
ある朝、キリリは風の音を聞きながら思うのです。すると、飛んできたのは青い紙ひこうき。そこには「夕方、そちらにつきます」と書かかれてあり、途端にキリリは落ちつかない気持ちになりながら一日を過ごします。一体誰が来るというのでしょう。夕方になって、そこに立っていたのは……。
少し不思議な出会いから始まる、シマリスのキリリとミケリスのミークの物語。すぐに仲良しの友達になった二人は一緒に楽しい時間を過ごすのですが、今の暮らしを楽しんでいるキリリと、ずっと旅を続けているミークには、やがて別れの時がやってきます。ミークが旅立ってしまったからです。ひとり残され、どうにもならない気持ちを抱えるキリリ。次の場所へと歩き続けていくミーク。
だけど話はここでは終わりません。大切な役割を果たすのは、ミークがキリリに贈った「あるもの」を切る取ることのできるハサミと、空へ放たれた数えきれないほどの紙ひこうきの存在。言葉にならないお互いの心の色を映し出し、その関係性に大きな変化をもたらせてくれるのです。
誰かを想うことや、会いたいという気持ち。それは、とても繊細ではかなくて。小さなきっかけですぐに壊れ、どこかに飛んでいってしまいそうで。でも、この物語の中でそれは様々な形となって二人をつなぎとめ、読み終わった時に確かな手応えを感じることが出来るのです。
56ページと、絵本にしては少し長めの物語。それでも野中柊さんの愛らしく自由で生き生きとした文章の魅力と、全ページオールカラーで味わうことのできる木内達朗さんの素晴らしい絵によって、世界にあっという間にひき込まれてしまうはず。(どこを切り取ってもうっとりするほど美しい色彩とキリリとミークの圧倒的な可愛さは、直接手に取って確認してみてくださいね!)
人との関係性について考えることの多い今だからこそ、幅広い年齢層に読んでもらいたい1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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シマリスのキリリのもとへ、ある朝、飛んできた青い紙ひこうき。「こんにちは。夕方には、そちらにつきます」と書いてあります。ごちそうを作って待っていると、ずっと旅をしているというミケリスのミークがあらわれました。キリリとミークは、なかよしのともだちになって、一緒に楽しい日々を過ごしますが、やがて、ミークが「もう行かなくちゃ」と━━はなればなれになったふたりをつなぐのは、はるか遠くの空へも、風に運ばれていく紙ひこうきでした。
「会いたい」という想いを伝え合う紙ひこうきは、実は、ミークがキリリに贈った不思議なハサミで切り取られた「あるもの」で作られています━━ふたりの心を映すさまざまな色合いの「あるもの」とは、いったい、なんでしょう? だれかとだれかの気持ちををつなぐたいせつなものを、全ページオールカラーのみずみずしい絵とともにさわやかに描いた物語。
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