夏だ!
虫だ!
恐竜だ!
それもいいけど、幻妖もいかが?
世界中で言い伝えられている、まだその実在が確認されていない生き物たちを集めた大図鑑が登場しました。
その名も『世界幻妖図鑑』!
神話や伝承に記された不思議な生き物たちを『幻妖』と呼び、その生態や彼らにまつわる物語を紹介した作品です。
幻妖は住む場所によって分類されていて、国ごとはもちろん、空に住むとされる幻妖や海に住むとされる幻妖、はては宇宙を住処にしているものまでいます!
地域ごとに幻妖の種類にも傾向があるのが、おもしろいところ。
氷で覆われ、植物の生えない北極圏には、実際の動物とほとんど変わらない姿をした幻妖たちが多く、灼熱の砂漠が拡がる国では、アッラー(神)が焼けつく風からつくりだした、いろいろな種類のジン(魔神)がいます。
特に興味深かったのは、古代ローマ時代、博物学者であるプリニウスが実在の生き物に並べて図鑑に収録したという幻妖が紹介されているページ。
科学の分野でその存在が信じられていた幻妖って、なんだかロマン、あふれていませんか!?
そして、本書のみどころとしてもうひとつ紹介したいのは、なんといってもそのイラストです。
「現地で発見された古い書物や、壁画のなかに描かれていた」、なんて言われても信じてしまいそうな説得力!
するどい目つきをしているものや、体があまりにも巨大な幻妖などを描いたイラストは、目にした瞬間、すーっと背中がさむくなるほどの迫力です。
それでいて愛嬌のあるかわいらしい幻妖も多く描かれていて、イラストをながめるためだけでも、一読の価値ある一冊です。
そんなイラストで描かれた、日本の妖怪たちが列をなす百鬼夜行の光景も必見。
いわゆる和風な風景ではない、どこか無国籍な雰囲気の町並みを、ぼんやりとカラフルな妖怪の群れが川の流れのようにつづいていくイラストは、幻想的でとても新鮮です。
あるものについて、「それがこの世に存在しない」ということを、証明する方法はない。
それを『悪魔の証明』と呼びますが、では果たして、伝説の生き物や妖怪は、本当にこの世に存在しないのでしょうか――?
きたるべき遭遇のときのために、ユニコーンの捕まえ方や、ドラゴン退治の方法を本書で学びましょう。
(堀井拓馬 小説家)
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