ある土曜日の夕方、一郎の元に届いたおかしな葉書。果たして一番偉いどんぐりは誰なのか?山猫裁判長に頼まれて一郎が思いついた判決とは?ユーモアに包まれた、メッセージの深さに思わずしんとする・・・。宮沢賢治の生前にただ一冊出版された童話集「注文の多い料理店」の冒頭を飾った傑作を、「小学館絵画賞」をはじめとする数々の賞を受賞している田島征三が、自然界ののどかな雰囲気をダイナミックに描いています。お子さんが成長しても記憶に残る傑作です。
▼「宮沢賢治の絵本」シリーズ
【著者プロフィール】 田島 征三 1940年大阪生まれ。幼少期を高知で過ごす。多摩美術大学図案科在学中に私家版「しばてん」(1971年偕成社より出版)を制作。1969年「ちからたろう」(今江祥智/文 ポプラ社)の絵でBIB金のりんご賞受賞。同年東京都日の出村に移住。畑を作り山羊を飼うといった自然の暮らしの中で画業に没頭する日々を送る。1974年「ふきまんぶく」(偕成社)で講談社出版文化賞絵本賞、「とべバッタ」(偕成社)で1988年絵本にっぽん賞・小学館絵画賞などをはじめ数々の賞を受賞。1998年伊豆半島に移住。木の実による絵本「ガオ」「モクレンおじさん」(ともに福音館書店)で新境地を開く。他に「かちかちやま」「おおきなかぶ」(三起商行:ミキハウス)など多数。 続きを読む
ある日、おかしなはがきを受け取った一郎。
彼は山猫裁判に召集されたのです。
そこではたくさんの金のどんぐりたちが
誰が一番かで揉めているのでした。
文字だけでもドキドキワクワクの宮沢賢治の童話、
それに田島征三さんの力強いタッチの絵がつきました。
流れるような草木やワーっと集まるどんぐり、
山猫のその口!
見ているとその勢いにすいこまれそうになります。
独特の絵とお話に魅了されました。
気になるのは、どこもかしこも不思議な中で
どこか生真面目に扱われる、召集はがきの描写。
一郎がそれに関して最後にちょっと後悔もしているため、
切ない余韻としても残ります。
メールでやりとりしてばかりの今、
彼らが文章や文字の扱いで、一喜一憂したりする様子が
興味深く、愛おしいですね。
シンデレラのように
魔法の時間はフッと終ってしまいます。
馬車が一郎の家についたら、
山猫らは消えてしまい、金のどんぐりも茶色に。
秋には必ずどんぐり収集家、
そんな娘は特に残念そうでした。
そして、
「金色だったのは光のせいだったんじゃない?」と。
そうだね、山猫らがいたのは、
眩い光の指す、特別な場所だったのかも。
最後のページ、
ますの中のどんぐりを覗き込む一郎を見て
それが輝いていた時間を一緒に想ってしまいました。
子どもの大好きなどんぐりや猫がでて、
絵にも強烈なインパクトがあるので
低年齢からでも読ませやすいと思います。
秋を感じながら読むのにぴったり。
親子で楽しめる、ユニークな絵本です☆ (ととくろさん 30代・ママ 女の子6歳、女の子2歳)
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