まるで、ながい夢を見ているような……
不安でたまらないのに、ページをめくる手がとまらない、危険な味わい。
怪談? ファンタジー? ジャンル分け不能の不思議体験! 日常のなかにひそむ非日常の物語「今そこにある不思議」をテーマにした短編が7篇。
あるきっかけから学校にいくことをやめた少年が、オオカミのマスクをかぶって家を出る。顔を隠したまま街をいくという、その奇妙な体験の中で得られた気づきと、すべてがひっくり返る衝撃的な結末を描いた中編、「オオカミの時間」
ハードボイルドからデスゲームまで! 意外なジャンルから放たれる「なんで?」と「どうして?」の弾丸。理解しようとすればするほど、不安で胸がいっぱいに……。不条理に満ちた物語「ピストルをかまえろ!」の短編が5篇
世界で最後の子どもを王様にすえた国。国民がみな王である少年を心から愛し、その生活が国民に放映されるいびつな世界。そして、少年が少しずつ知ることになる、王国の謎と陰謀……。SF中編「最後の王様」
全部で短編12篇+中編2篇を収めた4つの章からなる、珠玉の短編集!
著者は、1度読んだら忘れられない(怖い!)ことで名高い『お父さんがいっぱい』でおなじみの児童文学作家・三田村信行さん。本書は『お父さんがいっぱい』と同じ佐々木マキさんとのコンビというところにもぜひご注目を。一方で「キャベたまたんてい」シリーズや、「きつねのかぎや」シリーズ、「ネコカブリ小学校」シリーズ、「妖怪道中膝栗毛」シリーズなど小学校低中学年向けの楽しいお話も多数生み出されており、これらのシリーズで育った子どもたちが本書に出会ったら、作風の違いに驚きつつも、さらなる本の面白さと奥深さに出会えるのではないでしょうか。
ほっこりあたたかな〈不思議〉も、背筋ヒンヤリほんとにあり得る〈不思議〉も、はたまた理解をはるかに越えた〈不思議〉も——
ジャンルもさまざま、味わいもさまざまな短いお話の詰め合わせは、まるで暗闇で乗るジェットコースター!
この話がどんな結末になるのか、次の話がどんな非日常を見せてくれるのか、まるで予想がつかなくて、ハラハラドキドキ!
ふりむけばそこに、不思議はひそんでいるのかも……?
いま自分が生きている日常を疑いだしてしまうような、不穏な魅力をもった一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
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