大きくなったねずみのカリカリは、ある日、父さんに「ひろいせかいへでていって、じぶんのくらしをはじめなさい」と言われます。
「ひとりはやだなあ… どこへいこ?」と迷いながらも、母さんが作ってくれたリュックサックを背負って歩き出すカリカリ。
さくらの花や、ハチ、アジサイ、ヤドカリ、もぐら、とり……。
いろんな生き物に出会いながら、うつりゆく四季の中、自分の場所を探して歩きつづけます。
さあ、カリカリは「ここにしよう!」と思える自分の家を見つけられるのでしょうか……?
何と言っても、かわいいねずみのフェルト人形に目が釘付け。
リュックサックやマフラー、傘や浮き輪といったフェルトの小道具も愛らしくて、すみずみまで見飽きません。
四季をうつし出す写真が瑞々しく、砂粒がしっとしりた砂浜や、やわらかそうな花びら、秋の地面に落ちたつややかな栗も美しい。
詩人・武鹿悦子さんのゆったりしたリズムは、どこかなつかしく、声に出して読むとその心地よさがわかります。
読み聞かせにはちょっぴり長めですが、季節が一巡するカリカリの旅は、とてもわかりやすくて楽しいです。
小さなカリカリが自分の足で歩き、素敵なものにうっとりしたり、思うように行かずにがっかりしたりを繰り返しながら、自分の家にたどりつくまでの一年の旅。
たくましくなったカリカリの成長も感じられますよ。
はじめてのひとり読みにもおすすめの、かわいい写真絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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