ひとりひとり
違う目と鼻と口をもち
ひとりひとり
同じ青空を見上げる
ひとりひとり
違う顔と名前をもち
ひとりひとり
よく似たため息をつく
「ひとりひとり」ではじまるフレーズの連なりと、やわらかなイラストにより描き出されるのは——
この地球に生きる、すべての人々が抱える孤独と、自由。
そして、たしかな絆のニュアンス。
谷川俊太郎さんの詩と、画家いわさきちひろさんの水彩画が共演する絵本です。
子どもの幸せと平和をテーマに描かれる、いわさきちひろさんの水彩画。
初期より、社会の中での孤独と、宇宙の中での孤独という、ふたつの視点から人間を捉えてきた谷川俊太郎さんの詩。
そのふたつが混じり合って、どこか切なくも、さわやかな読み心地と、余韻を引く、あたたかな読後感になっています。
家族であれ、恋人であれ、人間は究極にはひとりとひとりの集まりでしかない。
時に身近な目線で、時に巨視的な目線で描かれる、ひとりひとりが違うということの孤独。
でも、だからこそ結ばれる、絆のつよさ、やさしさ——
多様性や平等がつよく叫ばれる今だからこそ、よりつよく、豊かなメッセージとなって胸に響く一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
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