無邪気な目を真っ直ぐにこちらに向けて、「どうして?」とたずねる女の子が表紙。
その口からは、すでに次の「どうして?」が顔を出しているようにも見えます。
ほほえましい気持ちでページをめくれば、まさかの展開、悪の科学者・エックスせん博士登場!?
「わっはっはっは! さっさと逃げろ、つまらん腰抜けどもめ!」
世界征服をもくろみ、おのれの力を見せつけようと、ショッピングモールに降り立った!
しかし、そんなエックスせん博士の前に立ちはだかる、ちいさな女の子。
「どうして?」
強力な武器を持ち、空まで飛んでみせるエックスせん博士に、しかし女の子は全くひるむ様子はありません。
それどころか、次から次へとくり出される「どうして? どうして?」の嵐に、博士の方がもう、たじたじ……
でも、そんな女の子の疑問を、ひとつとして突っぱねたりしないところに、エックスせん博士の人の良さが出てしまっています(悪の科学者なのに!)
女の子の「どうして?」に、ひとつひとつ、真剣に答えていきます。
そうして、あらためて自分自身を見つめ直していくうちに、やがて博士は、自分のほんとうの願いに気がついていきます。
「今までずっとそうだったから」というだけの理由で、つづけていること。
自分のやり方が正しいと、疑わないでいること。
どうしてそれをしているのか、どうしてそうしたいのか、ふり返ってみれば、実はまるきり見当違いだった。
どんなに賢く、多くの経験を積んでいても、そういうまちがいにはなかなか気づけないものです。
だからこそ、ふと立ち止まって「どうして?」と自分に問いかける時間が、必要なのかもしれません。
さすがにエックスせん博士ほど忍耐強く、「どうして?」の嵐には向き合えませんけれど——
さて、自分の本当の願いに気づいたエックスせん博士は、別の博士に名前を変えました!
博士のおかげで、"いろんな意味で"、温かな結末の物語になったようです。
(堀井拓馬 小説家)
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