森に住む大きなねこは、生まれたときは普通のねこでした。でも、あっという間に大きくなって、木よりも大きいどころか、背中に木が生えてくる始末。他の動物たちは大きなねこを「もりねこ」と呼び、恐れて近づかなくなってしまいました。
もりねこは、昼間は森で眠り、夜は海で魚をとって食べました。毎日同じことの繰り返し。「ひとりぼっちも きらくでいいさ」とつぶやきますが、魚の骨をくわえてうつむく顔は、とても気楽そうには見えません。強がりのような、どこかあきらめたようなその顔に、胸が締め付けられます……。
そんなある寒い日。もりねこの背中に小鳥たちがやってきました。小鳥たちは、もりねこの背中をあたかい森だと思い込み、住み着きました。「ひとりのほうが きらくなのになあ」とつぶやくもりねこ。他の動物たちももりねこの背中とは知らず、集まってくるようになりました。みんなを背中に乗せてうれしそうに笑うもりねこは、動物たちが感じているあたたかさとは違う「ぬくもり」を感じているのかもしれません。だって、幸せそうな顔で「ひとりじゃないのも わるくはないな」なんてつぶやいているのだから。
もりねこのように、言葉と表情と本心は、一致しているときもあればそうじゃないときもあるもの。そして、一致していないときにこそ切実な思いを抱えているように思います。まだまだこの後も揺れ動くもりねこの心。最後まで見守ってあげてくださいね。
(近野明日花 絵本ナビライター)
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あるところに おおきな おおきな ねこがいました。
ねむっているすがたは まるで 森のようです。
生まれたときは、ふつうの大きさでしたが、どんどん大きくなり、森の木々よりも大きなねこになりました。
そんなねこを、森の動物たちは、怖がり、避けるようになりました。
それから なんねんも なんねんも もりねこは ひとりぼっちでした。
「ひとりぼっちも きらくでいいさ」
ある日、もりねこの背中に、小鳥たちがやってきました。
その後、どんどんいろいろな動物たちももりねこの背中に住み着くようになって……。
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