山の大きな木の中に、ごちそうするのが大好きなうさぎが住んでいます。
秋になるとクルミやドングリをいっぱい集めて、うさぎは木の葉に手紙を書くのです。
「うさぎの いえに ごちそう たべに きてください」って。
「てがみ ありがとう」とやってきたのは、りす、あかねずみ。
クルミやドングリを嬉しそうに食べて帰ります。
そして「うさぎさんの いえで ごちそうが いただけるって きいてきたのよ」と舞い込んできたのは、旅の途中の蝶、あさぎまだら。
あさぎまだらはこれから、遠い南の国へ飛んでいくのです。
思いがけないお客さんに、目をぱちぱちさせたうさぎですが、ふじばかまが咲く山のお花畑へ案内するととっても喜ばれます。
なんてごちそう上手なうさぎでしょう!
次々おとずれる山の生きものたちに、うさぎは心づくしのごちそうをするのですが、だんだん、ごちそうするものが減ってきてしまって……。
冬を迎え、うさぎはどうしたのでしょうか?
さまざまな生きものと山のごちそうを描くのは、今注目される絵描きの1人である、しもかわらゆみさん。
つぶらな瞳や細やかな毛並み、おいしそうな実が生き生きとして魅力的!
そして「つるばら村」シリーズをはじめ童話作品に定評がある茂市久美子さんの文を声に出して読むと、うつくしく味わい深い日本語に打たれます。
何だかとっても品があって、何度も読みたくなるおはなしなのです。
(干し柿がこんなにおいしそうに感じられる絵本も、はじめてかもしれません)
秋から冬、そして春へ。移りゆく季節と山のめぐみ。
ごちそうの「お礼」にも心がぽっとあたたまる、おはなし絵本。
幼い子どもからおじいちゃんおばあちゃん世代まで、一緒に味わっていただきたい絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む