風をいっぱいに受けた帆がふくらんで、夏空の下、大海原をさっそうとすべるヨット!
でも、ヨットに乗っているのは、一つ目小僧に化け猫、みのわらじ……みんな、妖怪です。
しかもヨットの帆だと思っていたのは、やっぱり妖怪、いったんもめん!
「むねはって なつのうみを まっしぐら」
そんな、夏の一コマを詠んだのがこちらの一句なのですが……こんな俳句、アリ?
「とくせいの ぼうえんきょうで ほしをみる」
そんな一句が詠んだのは、秋の夜空に目をこらす、三つ目女のその姿。
三つの目をぜんぶ使って星を見られる、特製望遠鏡! ちいさな星でもくっきり見えそう。
『妖怪横丁』『妖怪遊園地』『妖怪温泉』などなど、広瀬克也さんの「妖怪シリーズ」でおなじみの妖怪たちが、四季折々におおさわぎ!
新年からはじまり、春、夏、秋、冬ときて、おおみそかへ。
妖怪たちのたのしげな日常を、63の俳句とイラストで描き出した、妖怪俳句絵本です!
俳句制作は、『なぞなぞのたび』(フレーベル館)、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)や、「リサとガスパール」シリーズの翻訳で知られる石津ちひろさん。
正月には福笑いのために、秋にはハロウィンの仮装のために、顔をシールまみれに飾り立てられる、のっぺらぼう。
春には雪どけのたよりに青ざめ、夏にはかき氷をいくら食べても足りないとこぼし、冬には空をまう雪に、思わずスキップ!
季節ごとにいろいろな表情を見せてくれるのは、雪女です。
そんなふうに、思いもよらない形で俳句になったそれぞれの妖怪の個性が、おもしろおかしい、いとおしい!
「妖怪シリーズ」読者はもちろん、この作品から読んでもたのしい一冊です。
さて、最後に妖怪俳句クイズ!
「かぶりつく たびにみんなが おれをみる」
夏のある光景を詠んだこの一句、いったい誰のことを詠んだものでしょう?
口元のあれは、スイカの汁? それとも……。
(堀井拓馬 小説家)
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