初めて手に取った時、柔らかく明るい春の絵本なのかと思いました。
花かんむりをつけた女の子とねこが、こちらに向かってにっこりと微笑んでいます。
「こんにちは あした」
曇りない真っ直ぐなまなざしで、しあわせな明日にあいさつしているようです。
そうして本を開いてみると……
女の子とねこの頬には、涙がつたっています。
きょうが かなしみのいろに そまっていても
わたしはきぼうに さよならをいわない
こんにちは あした
まだわたしには あしたがあるから
シンプルで力強いことばを編んだ内田麟太郎さんは、あとがきでこう語っています。
「どんなに今日ににていても、明日は明日です。ほら、爪ものびています。髪ものびています。明日も今日とおなじ悲しみがつづくと、命をたとうとしたことがあります。
ちがっていました。明日は明日です。」
淡く優しい銅版画でことばに命を吹き込んだのは南塚直子さん。内田さんの詩に心揺さぶられ、この絵本をどんなふうに描こうか2年ほどあたため抜いたとSNSで語られてました。読み手に向け、おふたりが時間をかけ大切に紡がれた一冊です。
こんにちは あした
あなたは、子どもたちは、どんな時にこのことばを口にするでしょうか。
そばにいる人に、ちょっと元気のないあの人に、いつこのことばをかけるのでしょうか。
必ずおとずれる明日を見つめて、今日を生きていくためのおまもりのような詩。惜しみなく口ずさみ、手渡していきたいと思います。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
続きを読む