あるところに、とても美しい国があり、立派なお城がふたつ建っていました。赤いお城の王様と青いお城の王さまは大変仲が良く、住んでいる人同士も仲良しでした。そんな王さま同士に、取るに足らない些細なできごとが起こります。ですが、その取るに足らないことをきっかけに、このふたつの城の王さまたちはあっさりと戦争を始め、住んでいる人々を兵士として向かわせるのです。
どちらも互いの城に踏み込むことはできません。そうして続く戦争によって兵士たちは死に、家族は涙を流します。それでも意味なく戦争は続けられていきます。ある時、ようやく人々は旗ややりを投げ捨てますが、王さまたちだけは平和を望まずにらみ合いが続き……。
作者はフランスの絵本作家で、その色使いから「色彩の魔術師」と呼ばれるエリック・バトゥー。本作でも、赤い王さまと青い王さま・赤いお城と青いお城という色の対比によって、戦争の風景を描いていきます。当初は人々が仲良く住む美しい国の風景が、戦争が始まると、その中で大砲が飛び人々が倒れていきます。淡々と進む戦争の姿が、きっかけの無意味さもあいまって、さらにその愚かさを印象付けていきます。
この絵本は2000年にフランスで最初に刊行されましたが、この絵本で描かれた仲よく暮らす美しい国の人々、無意味に戦争を続ける王さまたち、これは現代の世界をほうふつとさせないでしょうか?
戦争によって一番苦しめられるのはだれか、戦争の愚かさを、わかりやすく子どもたちに伝え、世界についても考えさせてくれる絵本です。
(徳永真紀 絵本編集者)
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