地球温暖化による気候変動、大量絶滅による生物多様性の喪失など、人類の活動を原因とする地球環境危機に脅かされる「人新世」。国境を越えた人類共通の課題として、現代社会のあり方や政治と経済の関係が鋭く問われているとき、世界中を巻き込んだコロナ・パンデミックに直面した。著者はいまこそ、人類史的視野に立った世界観が必要であり、人類社会の進歩のための変革の理論が必要だと説く。「本書は、こうした今日の世界史的状況を念頭に置いて、あらためてマルクスとエンゲルスが示した唯物史観の今日的意義を確認し、そうした歴史観にもとづいて21世紀的な課題についての創造的解明をめざしたものである」(「はじめに」より)。
危機意識は唯物史観をこそ求めている
行き詰まる資本主義経済、すすむ地球環境危機、そしてコロナパンデミック──
──これを「人新世」と名づけ、脱却をめざす議論が盛んである。
今あらためて問われているのは、人類史的な視野に立った世界観である。歴史科学に裏付けられた確固とした歴史観、人類社会の進歩のための変革の理論である。
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