るなちゃんには、好きなものがたくさんあります。さくらんぼ、ねこのミモ、あたらしいパジャマ、それから寝る前におかあさんに本を読んでもらうこと。だけど今日は、おかあさんがなかなか来てくれません。るなちゃんがベッドの上で眠れなくてこまっていると、
「るなちゃん、こんばんは」
窓の外に、男の子がふわりと浮かんでわらっています。一緒に月の公園に遊びに行こうと言うのです。手をつなぐと、るなちゃんもミモもふわりと浮かび……。
満月の夜に繰り広げられるのは、壮大で幻想的で、でもどこか儚げな世界。パジャマ姿のたくさんの子どもたち、お月さまのボール、街まで見おろせるブランコ。色味は少なく、みんな少し透き通っているのですが、なんて美しいのでしょう。見たことのない行列やちょっと怖そうないきものもいます。
日常の時間から、ふと夜の不思議な世界へと誘ってくれる、竹下文子さんの書く物語を、圧倒的な画力で魅せてくれるのは島野雫さん。水彩と日本画の混合技法で描かれたというその表現は、るなちゃんとミモのあたたかみのある愛らしい表情から、どこまでも吸い込まれそうな真っ黒で深い夜の風景まで、幅広い表現で読者の目を惹きつけます。
「るなちゃん、るーなちゃん」
あ、どこからか大好きな優しい声が聞こえてきましたよ。大好きなものにかこまれて、るなちゃんは本当に嬉しそうですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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