ももちゃんは、新しい町に引っ越してきました。周りには、いろいろなおうちの、いろいろなとびらがあります。ももちゃんは気になるおうちのとびらを次々にたたいていきました。
大きなとびらのおうちは、くまさんのパンやさん。小さなとびらのおうちは、さるの果物屋さん。ほかにも変わった形のとびらや、きれいな色のとびらなど、いろいろなおうちのとびらをたたいてみると、それぞれにすてきなご近所さんたちがいて、おいしいおみやげもたくさんもらいました。
そこでももちゃんは、おみやげを使ってみんなへのお礼にケーキを作りました。しかし、そこにご近所さんたちがみんな集まってきてしまったのです。
「この けーき だけでは たりないわ。どうしよう、どうしよう。」
困ってしまったももちゃんでしたが……。
「とびらのむこうの ふしぎなおみせ」というタイトルの通り、この絵本の魅力はなんといっても、ももちゃんがたたいていく、いろいろなお店の“とびら”です。とびらをたたく前は、その向こうに何があるか見えないのでドキドキしますが、勇気を出して入ってみたら、そこにはすてきなものが待っています。読者も、ももちゃんの気持ちになって「このとびらの向こうには何があるのかな?」という気持ちを体験することができます。カバーにはとびらの形の型抜きがあり、「これはなんだろう?」と、とびらの向こうへのドキドキ感をいっそう高めてくれます。
そして、いろいろなとびらのご近所さんたちのお店が、町のどこにあるのかも、最後にある町全体の絵で種明かしされています。町の全体を知った後にもう1回読み返して、「あ、ももちゃんはこの道を通ってくまさんのパンやさんに行ったのね」という読み方や、ももちゃんといっしょに「とんとん」ととびらをたたいてページをめくったりなど、いろいろな読み方もできる、とっても楽しくかわいらしい絵本です。
(徳永真紀 絵本編集者)
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