雑草が生えたトンネルの向こうの小屋は「むかしから ずうっと ここにたってる どこかにいきたいと おもったことはない」。水田のそばにポツンと立つ小屋は「まいあさ そらに おはようっていう そらは へんじしないけど かまわない」。
トタン板のつぎはぎの小屋は「ぼくをたててくれたひとは えらくない えらくないから すきなんだ」。清々しいようなさびしさ、凛々しさ。そこはかとなく漂うユーモア。いろんな場所に立つ小屋がひとりひとり語るかのような文と写真を見つめていると、おや、ふと本当に小屋たちが生きているような気がしてきます。
本書は、写真家・中里和人さんと、詩人・谷川俊太郎さんがタッグを組んで生まれた写真絵本。中里さんは「小屋 働く建築」展(INAXギャラリー、2000年)や写真集『小屋の肖像』(メディアファクトリー)などで、日本全国で撮影した小屋を発表。絵本は2007年刊行後、しばらく入手困難となっていましたが、このたびページと写真を増やし、文の一部を改訂して、再び刊行されることになりました。
月光も風も、隙間から入る小屋。雨の歌を聞き、海の彼方に思いを馳せて……。山里や海辺の小屋がそれぞれ経てきた時間と、ひっそりとした佇まいが凝縮した絵本。「みてるとこやがすきになる、すきになるとひとりごとがきこえてくるよ」……谷川俊太郎さんが、刊行にあたり帯に寄せた言葉です。きっと子どもも大人も、何気なく通り過ぎてきた小さな建物に、耳をすませたくなるはずです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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山里や海岸にひっそりとたっている小屋たちが、一人一人語り出します。「からっぽじゃないよ」「ぼくをたてたひとは えらくない えらくないから すきなんだ」など、ユーモアのある言葉で、ものを見るのが楽しくなる絵本。
2007年に出版されていた本をもとに、8ページ増やし、写真を選び直して、文の一部を改訂しました。
中里さんは、年を重ねた人々の肖像写真を撮るかのように、日本全国の小屋を撮影してきました。
谷川さんの、小屋たちが語っているかのような文で、読んだ人が世界に引き込まれます。
この本を読んだ後には、街を歩くときにも小さな家が気になり、お気に入りの小屋を見つけたくなりました。
すべてのものに命が宿っている、という感覚を子どもたちに楽しんで欲しいと思っています。
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