表紙は、手を組み、こちらをじっと見つめてくる紳士。
どことなく漂う気品と強いまなざしに、ちょっと緊張しながらページをめくると,
おじさんの方から手をあげてごあいさつ、しかもとってもフランク。と、拍子抜けする間もなく、
あれ、れ おひげが ビヨ〜
ビヨ〜 ビヨ〜 グルリンコ
グルグル グルグル グルリンゴ
おじさんの口元の整ったひげ、その片方だけが伸びはじめ……グルリンコと輪をかきながら伸び続け……伸びきった先が巻きついたのは、りんご?!
おじさん、うれしそうに舌なめずり! 最初の印象と随分ちがいますが。
すると今度は、めがねと蝶ネクタイをつけて学者?音楽家?知的なたたずまいの新たなひげおじさんが登場。口元からあごにかけ、豊かなひげをたくわえています。
らら、ら わたしの おひげが ボア ボア ボッボ
ボワ ボワ モジャ モジャ ボーワ ボワ
またまた伸びてゆきます、どんどんと……一体このおじさんのひげは、どうなってしまうのでしょう?
シンプル、なのに予期せぬシュールな展開と飄々としたイラストがゆるり、じわじわとクセになっていきます。特にひげの動き、ビヨ〜ビヨ〜、ボアボア、クルクルクルルーって、声に出して読んでみるとさらにおもしろい!
ひとつ困るのは、絵本を読んだ後に周りの「ひげおじさん」をつい探してしまう、そして見つけると、ひげはどんなふうに伸びるんだろうって妄想してしまうこと。いけませんね。絵本の中のひげおじさんとだけ、たっぷり遊んでおこうと思います!
(竹原雅子 絵本ナビライター)
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