私たちが当たり前のように使っているストロー。冷たい飲み物を飲む時には欠かせない、とっても便利なものですよね。このストローが発明されたのは、約5千年以上も前のこと。古代シュメール人が大麦ビールを飲むのに葦を使ったというのがはじまりだそうです。
その後、世界のあちこちで、植物のくきが使われたり、先端にフィルターがついた銀か銅のチューブが使われたり。けれども植物でできていると、植物のカスが出たり、味が変わってしまうという問題があり、そこを解決するためにアメリカの発明家、マービン・ストーンが作ったのが紙のストローでした。しかしここでも、紙はぬれるともろいという問題が出てきて、それを解決するべく誕生したのが、プラスチックのストローだったのです。
ここまで読むと、なんてプラスチックのストローは優秀なのだろう。5千年もの長い歴史の中であらゆる工夫が凝らされてたどりついた、魔法の道具……というように感じてしまうのですが、本の中で「なにかの解決策が、あらたな問題の元になることもあるもので……。」と書かれている通り、今、海を汚す環境問題を引き起こしているのは、多くの方が知るところですよね。
この本は、タイトルと表紙から、環境問題をテーマにした作品だと多くの人がまず思うことでしょう。けれども読み始めると、プラスチックストローができるまでの大歴史物語になっていて、人間の歴史と文化と発明の変遷の面白さにとってもワクワクさせられます。
不便な点を改良して、より便利なものを生み出していく……。長く続く人間の営みと挑戦には感動すら覚えます。しかし便利であることのその先に起きていることが、現代の私たちに大きな問題として降りかかっています。それはきっとプラスチックの問題だけではないでしょう。
大きな歴史の流れの中で今私たちがどの段階にいるのかを意識するような一冊。私たちはこの先どんな一歩を次に繋げていくことができるのでしょうか。
第70回課題図書小学中学の部に選定されている本書ですが、子どもだけでなく大人も一緒に読んで考えたいことが詰まっています。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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