かつて人間とともに地上で暮らしていた魔女は、〈神炉の火〉を手に入れた人間たちによって地上を追いやられて以来、交わることがなかった。主人公の魔女ノラの心臓は生まれてすぐに一度、止まりかけた。ノラの心臓をなおしてくれたのは、地上の人間の医者だった。“魔女は心臓で魔法をかける”のだが、ノラは自分の意思ではなく驚いた拍子にしか魔法をかけることができない。一度止まりかけた心臓のせいで、しかも人間にさわらせたせいで。ノラは自分が落ちこぼれの魔女で、姉さんたちのお荷物だと思いながら暮らしていた。
ある日ノラは、北の塔の書庫で一冊の古い本に書かれていた「黄金の心臓」という言葉を見つける。それは魔法の力を正しく強くするもので、地上のどこかにあると。ノラは〈黄金の心臓〉を見つけ出すために、地上へと旅立つ。
人間が見つけた〈神炉の火〉とは、神炉という地底の種族が自ら生み出す力を利用することだった。人間は神炉を地上へと引きずり出して利用してきたが、それでも神炉を飼い慣らすことはできていなかった。不安定な神炉が暴走することによる被害も少なくない。神炉の生け贄のために育てられた少女リンゴを、ノラは助け、行動をともにするようになる。
猫と人間のハイブリッドとして作られたタタン。人間の町で出会う少年ヒオ。〈時の牢獄〉にとらわれているシュユ・シン。魚の森の〈ラ〉……さまざまな出会いが、あるときにはノラを支え、あるときには不安で涙を流しながら〈黄金の心臓〉を探し求めるノラの旅がはじまる。
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