ノニは色々なことができます。弟にミルクもあげられるし、友だちのスージーの家にも一人で行けます。ABCをさかさまから言えるし、ママのお手伝いだってできます。
でも、ひとつだけできないことがあります。ノニはどうしても「いやっ!」と言えないのです。
スージーがお泊りにくるのがいやな時だってあるのに、お気に入りのワンピースや大事なお人形を貸したくない時だってあるのに。どうしても、絶対に「いやっ!」と言えません。ずっと小さかった頃は平気で言えたのに。
ある日、ノニが「いやっ!」と言えないばかりに、ノニはとんでもない髪型になってしまいます。これにはノニも、ノニのママも「うん」と言わなければよかったと心から思い……。
気持ちを伝えるって、大事なこと! 読み終われば、誰もがそう思うことでしょう。伝えてしまえば、相手は拍子抜けしてしまうほど受け入れてくれることだってあるのですから。でもそれができないから困っちゃうのです。小さな頃よりも心が繊細になり、友だちとの関係が複雑になっていくからこそ、こんな悩みに直面する子もきっと多いことでしょう。
カナダ出身の作家・画家コンビにより手掛けられたこの絵本。ノニの繊細な気持ちに寄り添いながらも、決して重くなりすぎず、軽やかに可愛らしく心の葛藤を描きだしています。色々なタイプの子どもたちに読んでみてもらいたい、魅力的な一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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主人公のノニは、いろんなことができるしっかり者ですが、ひとつだけできないことがあります。それは、いやなときに「いやだ」と主張すること。そんなわけで、友だちのスージーに、髪の毛を切られたうえに染められてしまったり、大好きな本を破られてしまったり。挙句にベッドまでとられてしまいます。とっておきのシリアルまで食べられそうになり、我慢も限界にきたノニが勇気をふりしぼって「いやっ!」と叫ぶと……、スージーは拍子抜けするほど簡単にノニの主張を受け入れます。
2〜3歳頃までは、自分の気持ちのままに主張していた子どもも、もう少し大きくなると「いや」といったら相手はどう思うだろうと気にしはじめます。友だちと関わるなかで、いやなときでも「いやだ」といえず、ノニのようにもやもやしたり、イライラしたりする子どもも少なくないと思います。本書はとりわけ、そんな子どもたちに読んでほしい。いやなときは「いや」といっても大丈夫なのだと、主張するのが苦手な子どもの背中を押してくれることでしょう。
この作品を手がけたのはカナダ出身の作家・画家コンビです。淡い色使いのソフトなタッチの絵はノニの気持ちに寄り添ったお話のトーンとマッチして、魅力的な絵本に仕上がっています。気持ちをつたえること、ときには主張することの大切さを教えてくれる本書は、友だちとの関わりが増えてくる時期の子どもたちにぴったりの1冊です。
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