お父さんとお母さんが旅先で行方不明になってしまい、ひとりでしょんぼりしていた象の男の子。そこへやって来てくれたのが、「ぼくのおじさん」。彼を預かるため、迎えに来てくれたのです。
顔にはしわがたくさん、動き過ぎると体がぎしぎしするおじさんは、とても年老いているのだけれど、素敵なお庭を見せてくれたり、お話をしてくれたり、服を着れるだけ着て笑わせてくれたり。楽しいことをいっぱい知っている素敵なおじさんのおかげで、「ぼくとおじさん」の心の距離はだんだんと縮まっていったのです。そんな時、嬉しいお知らせが届き……。
ちょっぴり切ない展開から始まるこのお話。だけど、そこはやっぱりローベルなのです。二人のエピソードを、1章ずつ丁寧に積み重ねていきながら、読者はその世界にどんどん惹きこまれていきます。何より、鼻を使ってコミュニケーションをとる二人の姿がユーモラスで、とっても愛らしくもあり。おじさんの家の、暮らしぶりが伝わってくる背景も素敵です。心にじんわり染みてくる、親子とはまた違った魅力のある物語。
どんな状況にあっても、悲しい出来事に直面していたとしても、優しく包み込んでくれる人がきっといる。手をさしのべて、見守ってくれる人がきっといる。ローベルの子どもたちへの一貫した優しい眼差しや、強い思いが伝わってくる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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